毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「で、どーなのよ最近は」

ドアに手を掛けたときだった。

教室の中から聞こえてきた声に、別に悪いことはしていないのに咄嗟に手を引っ込めてしまった。

ドアの上のほうが枠組みされていて、一部がガラスになっている。

そこから覗いたら自分の席に座っているこころちゃんと違うクラスの女子が一人見えた。

確かこころちゃんと同中の子だ。
たまに教科書を借りに来てるのを見たことがある。

教室の中には二人だけしか居なくて、
座っているこころちゃんと、ゆうれいの席に座って喋っている二人は私に背を向けていて気づいていない。

「んー、いい感じかなぁー」

かっちゃんのことを喋っているみたいだった。
こころちゃんの声がいつもより弾んで聞こえた。

「でもほんとさ、マジでかっこいいよね」

ハシャぐように言った女子に、
「かっこいいっていうか、可愛いの割合が多いかも」ってこころちゃんが言った。

「無邪気なんだよね。なんでも笑ってくれるし、冗談もめちゃくちゃ言うんだよ?ギャグセン高いっていうか…ぜんぶ完璧!」

「ベタ惚れじゃん」

かっちゃんは確かに無邪気な顔でくしゃって笑うし明るいけれど、めちゃくちゃ冗談を言うタイプだったっけ?

こころちゃんの前だとやっぱり違うんだ…。

盗み聞きなんて趣味が悪いし、聞いてたってメンタルに良くないからさっさと体操服を取って帰ろう。

今度こそドアを開けようとして、しっかりと手を掛けた。

「でもまだ排除できてないんでしょ?」

「なかなかしぶといんだー」

………排除?
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