毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「今日さ、放課後なにしてる?」

「私?別になにもー」

下足箱で靴を履き替えながらゆうれいに答える。
ぐーって背伸びしながら、深呼吸したゆうれいが言った。

「遊びいこっ」

「どこに?」

「明日土曜じゃん。遅くなってもいいならどこでも行けるよ」

「どこでもって…非現実的」

「俺はー、ゆめとならどこでもいいってこと!」

「なにそれ」

クスクス笑ったら、ゆうれいも可愛い八重歯を覗かせた。

「じゃ、決まりね?いい?」

「わーかったよっ!」

「やった」

ふふって笑ったゆうれいが教室に続く階段をのぼっていく。

二年生の教室は二階。
あんなに軽快にのぼっていったら私は朝から疲れちゃうけれど、
ゆうれいの体はすごく軽そうに見えた。
幼稚園児みたい、なんて言ったら怒られちゃうだろうけど。

ゆうれいから遅れて教室に入ったら、もうかっちゃんの席で喋っている。

かっちゃんは登校するのが早い。
四人の中では学校と家が一番近いからだってかっちゃんは言う。

それに対して「だったら遅く来るほうを選ぶけどな」って私達三人は反論する。

だって中学生の頃のかっちゃんはそんなに早く登校するタイプじゃなかった。
むしろ遅刻ギリギリが定番だったし。

高校生になって登校する時間が早くなった本当の理由を私は、ううん。
ゆうれいもニカだって知っている。
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