毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「昨日のお金」

翌日、登校したらもうすでに着いていたニカの机に五百円玉を置いた。

「いらないよ」

「ううん。奢ってもらうの悪いから」

「結芽、こういうのやめようよ。私もムキになって悪かったって思ってるよ。結芽に事情があるんなら話して欲しいし、困ってるなら助けたい。私達が喧嘩するのやめよ?」

「ううん。最低なことしてるのは私だから」

「最低なことってなに?一緒に解決できるなら協力するから」

「ニカは大人だね」

「え?」

「恋愛経験も豊富だし、ニカはこういうときの対処法もきっと知ってるんだろうなって思うよ…。でも自分でなんとかするから」

「結芽…本当に何があったの?怜がなんかしちゃった?」

「もういいから!本当に…話したくないの。ゆうれいはなんにも悪くない。だからニカはゆうれいの味方でいてあげて?何を聞いても…。ゆうれいの言うことを信じてあげて」

なんて自分勝手なんだろう。
ちゃんと話もしないまま、結果だけをニカに委ねている。

ゆうれいを守ったふりをして、親友と向き合うことから逃げている。

それどころか「恋愛経験が豊富」とか嫌味まで言っちゃうし…。
私、いつからこんなに嫌な人間になったんだろう。

ううん。本当は最初からこれが私の本性だったのかも…。

こうなってまで私は本当にかっちゃんとのことを守りたかったのかな。

「おはよ。茅野さん、菊池さん」

「こころちゃん…おはよ」

「どうしたの?喧嘩なんて珍しいね?」

「市原さんおはよう。心配しないで?喧嘩なんてしてないから。ね?結芽?」

「う…うん、そうだよ。私がまーたワガママ言って困らせてただけ!」

「そう?それならいいんだけど。ねぇ茅野さん」

「ん?」

「今日の放課後なんだけど、ちょっと時間あるかな?茅野さんと話したいことがあるんだけど」

ドキってした。
こころちゃんの話したいことって、きっと″あのこと″だ。

あれから結構時間が経っちゃったけれどこころちゃんも気にしてたのかな。
気にしてる、割にはちょっと挑戦的な目。
謝りたいとかそういう話ではなさそう。

「それって二人じゃなきゃダメな話?私も行っていい?」

「んー…ごめんなさい。ちょっと茅野さんと二人だけでお話したいの。菊池さんのことが邪魔とかじゃなくてっ!ごめんなさい」

「こっちこそごめん!もし相談事とかなら私もいつでも聞くからね」

「ありがとう、菊池さん。それじゃあ茅野さん。放課後、よろしくね」

「うん…」
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