毒で苦い恋に、甘いフリをした。
こころちゃんは真っ直ぐにかっちゃんの席に向かった。

さっきまで眠たそうに机に突っ伏していたかっちゃんの表情もパッと明るくなった。

「話って風のことかな」

「たぶんね…。ねぇ、ニカ」

「ん?」

「さっきはごめんなさい…。自分がうまくいかないからって恋愛経験豊富とかニカに嫌味言って八つ当たりして…。最低だった」

「それはいいよ。そうしてきたのは私の責任だし。でもね?」

「うん」

「八つ当たりなんかじゃなくて、困ってるんならちゃんと相談してくれたほうがうれしいよ。こんなことで喧嘩なんかしたくない。そっちのほうが悲しくない?」

「うん…悲しい。本当にごめんなさい。ニカ、自分の中でちゃんと整理できたら絶対に話すから。待ってて欲しい」

「分かった。待ってるよ。とりあえず、市原さんと何かあるんでしょ?ちゃんと話してきな」

「ありがとう」

私の中で、どうしたってかっちゃんの存在は大きすぎる。
当たり前に、ニカのこともゆうれいのことも。

大切な親友を失くすなんて堪えられない。
もう逃げてちゃだめだ。

ニカにちゃんと話ができたらゆうれいのこともきちんとけじめをつけよう。

授業中もこころちゃんとの放課後のことをずっと考えていて、なんにも頭に入ってこなかった。
授業に上の空なのはいつものことなんだけど…。

もう何度目か分からない深呼吸を一日に何回も繰り返した。

教室の中ではいつもの天使の表情で微笑むこころちゃん。
変わった様子なんてどこにも見当たらなくて、それが余計に不気味だった。
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