毒で苦い恋に、甘いフリをした。
かっちゃんとゆうれいが教室を出ていった。
教室にはまだ残っているクラスメイト達が居る。

「こころちゃん、どうする?私達も一旦学校出る?」

「屋上に行かない?」

「屋上?」

「うん。風が気持ちいいし」

「ちょっと肌寒くない?」

「今日はいいお天気だから気持ちいいよ、きっと」

私を屋上に誘いたがるこころちゃん。

学園のミステリーとかサスペンスドラマなんかをふと思い出してしまった。
そのまま屋上から突き落とされるんじゃないだろうな…?

いやいや、いくらなんでも飛躍しすぎてるって…。

「いいよ。行こっか」

そのまま帰るかもしれないから鞄を持って屋上に向かった。

放課後は軽音部が部室を使うから、屋上を突っ切ってしかいけない音楽室や吹奏楽部の部室のために屋上は開放されている。

人通りがまったく無いわけじゃないから、そんなところでわざわざ“事件”なんて起きようもない。

こころちゃんが言った通り、屋上に出たら気持ちのいい風が吹いていた。

十一月も下旬に入ったけれど、今年は秋が長くて、日中だと汗ばむこともある。

穏やかな話だったら最高の放課後なのに、
この状況はさすがにムリ。

屋上に出た途端、こころちゃんの表情、なんか険しいし…。
まるで別人だ。

もしかして双子説?
どっかで入れ替わった?

そんなわけないけれど。
ずっとこころちゃんに張り付いてたし…。
< 127 / 208 >

この作品をシェア

pagetop