毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「違うことないよ。私はずっとかっちゃんが好きだった」

「変わっちゃったんだよ。茅野さんが風くんを好きで、うじうじ、うじうじしてないでさっさと言ってれば風くんの気持ちだって変わってたかもしれないのに」

「どういうこと?」

「さっさと言ってれば風くんだって茅野さんを意識したかもしんないのにさ、風くんは私を好きになってしまった。急になんとなく茅野さん達のグループに混ざるようになって、柳くんとの距離も近づいたはずだったのに柳くんにとっては違ったんだよ」

「私が…失恋するってゆうれいには分かってたってこと…」

「そうよ。風くんって一途でしょ?すごく。私のことを好きになった瞬間から、茅野さんは失恋するって柳くんには分かってた。だからもっと、茅野さんのことしか見なくなった。こんなに近くにいるのに私のことなんて見ない。柳くんの中心は変わんなかった!」

「だからってなんでかっちゃんに気があるふりしたの?そんなのますますゆうれいにも勘違いされるし、そんなに好きなら嘘なんかつかなきゃいいじゃん!私はたまたまゆうれいの近くにいただけで…」

「そうだよっ!!!」

大きい声を出したこころちゃんを吹奏楽部の人達がチラチラと見ている。

けれどすぐに休憩終了の号令がかかってみんな部室に戻っていった。

「こころちゃん…?」
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