毒で苦い恋に、甘いフリをした。
掴み合って、手元にあった鞄を投げつけあって、
鞄から散らばった教科書もノートも筆箱もポーチも、乱暴に投げつけあった。

部室から出てきた吹奏楽部の生徒達が騒いで、
屋上から近い階に残っていた生徒まで駆けつけてきた。

それでも私達は罵りあって、掴み合った。
こころちゃんの長い爪がくちびるの端をかすって、血が出た。

「あなた達!!!なにやってるのっ!!!」

吹奏楽部の顧問の先生とコーチに脇の下から両腕を入れられて、背中側から引きずられるようにして引き離された。

「もっとやれーっ!」って野次を飛ばしてくる男子を、駆けつけた男性教師が注意した。

「離してよ!この女絶対に許さない!」

「許さないのはこっちだから!かっちゃんに嫌われてもゆうれいやニカが私から離れていってもあんただけは絶対に一生許さないっ!」

「いい加減にしなさい!」

「うるさい邪魔すんな!」

まだ掴みかかってこようとするこころちゃんを、顧問の先生と女子生徒二人が必死で止めた。

「私がもうダメならあんただって絶対にダメだから。あんたは天使なんかじゃない…あんたの恋なんて絶対に叶えさせてやんないっ…!」

「は…あはははは!バッカみたい!あんたも…私も!どっちも負けてんだよ!どっちの恋も最初から終わってんだよずっと!」
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