毒で苦い恋に、甘いフリをした。
放課後。

みんなで遊びに行くのかなって思っていたら、ニカは他校の彼氏と正真正銘のデートだったし、
かっちゃんとこころちゃんは映画の約束をしているらしかった。

ホームルームが終わって号令がかかった瞬間に、みんなさっさと教室を出ていってしまった。

「ゆめー、俺らも早く行こ」

まだ席に座ったままの私に覆い被さるみたいに背中側から首に腕を回しながらゆうれいがじゃれてくる。

「ちょっと近いよー」

「いいじゃん。今さら照れてんの?」

「そういう問題じゃなくて!」

「じゃあ拗ねてんの?」

「違うから」

教室に残っている女子からも、
廊下からも女子の視線が痛い。

ゆうれいは自分の人気をもうちょっと自覚したほうがいい。

スキンシップが多いし、距離感がバグっていることにはもう慣れっこだけど、
人目が多い場所ではもう少し控えるべきだと思う!

付き合ってるわけじゃないし、それに私がかっちゃんを好きなことも知ってるくせに…。

「ううん。拗ねてるでしょ」

「…知ってた?」

「何が?」

「かっちゃん達。映画行くって」

「うん。朝聞いた」

「私達が遊びに行くって二人の前で言ったのもわざと?」

「風、嫉妬したかな?」

「…するわけないじゃん」

ゆうれい、いじわるだよ。
なんでかっちゃんが嫉妬するのよ。
気にも留めてないよ。

私はかっちゃんに嫉妬してもらえるような範囲にはいない。
ただの気の合う友達。
異性としての嫉妬なんか一生してもらえないんだから。
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