毒で苦い恋に、甘いフリをした。
休み時間になるたびにかっちゃんとゆうれいの席には人が集まった。

彼女と別れたって噂が一気に広まってしまったかっちゃんを、本人の気持ちなんて全然汲み取ってもらえなくて、女子生徒達は浮き足だった。

人に囲まれるかっちゃんの隣にジッと座ってる勇気なんて私には無いから休み時間のたびに教室を出て、心の中でずっとかっちゃんにごめんって繰り返した。

朝からニカに話しかけることもできなくて、
あっという間に昼休みになってしまった。

購買で適当にパンを買って屋上に行った。

何組かの生徒達が輪になってお弁当を食べている。

同じ学年の子も居て、私が屋上に来たことをあからさまにヒソヒソと囁かれた。

あーあ。
これから私とこころちゃんが屋上に出るたびにネタにされるのかな。

これじゃあまるでこころちゃんが言った通り「有名税」じゃん、なんて面白くもないツッコミを一人で入れながらクリームパンを齧った。

「ちゃんと話してないんでしょ」

屋上の地面に座り込んで、フェンスに背中をつけて寝たふりのポーズを取っていたら、頭の上から声が降ってきた。

「ニカ…」

見下ろしていたニカも私と同じスタイルで座った。

「朝から一回も喋ってないじゃん」

「ごめんね…。ニカとはちゃんと話したかったんだけど」

「ちーがーうー。怜と」

「ゆうれいと…。もう話すことないから」

「あれ?思ってたよりちゃんと話せたんだ?」

「ううん。一方的に、さよならって言った」

「はぁ?」

「ゆうれいとの関係を断ち切るのは当然で、このまま普通に今まで通りの関係に戻ることもできないから」

「なんで?」

「このまま“普通”の友達に戻ったらズルズルしちゃうなーって。ゆうれいも私から離れないとこのままずっと幸せな恋愛から無縁になっちゃいそうじゃん」
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