毒で苦い恋に、甘いフリをした。
ホームルーム中、かっちゃんからメッセージが届いた。

机の下で隠すようにスマホを触っていたかっちゃんが俯いたまま顔だけを私に向けて微笑んだ。

かっちゃんからメッセージが来ることは二度と無いって思っていた。

「終わったら学校出て西側のコンビニで待ってて」

かっちゃんのおうちの方向に歩いて一番近くのコンビニのことだ。

かっちゃんは高校まで徒歩で来れるのに、
バスに乗らなきゃいけない私が、かっちゃんと同じ中学に通えたのは、私の地元が山を越えた先にあったおかげだった。

小学校も中学校も高校も、私の“地元”には無い。
小学校から私はバス通学だった。
中学校は小学校からもう少しだけ離れていたけれど、そのおかげでかっちゃんと同じ学校に通えた。

こんなにもいくつもの偶然が重なってかっちゃんと出会えたのに壊しちゃったんだなぁって思うと改めてものすごく後悔が押し寄せる。

「一緒に出ない?」

「一緒にいるとこ見られないほうがよくない?」

「そうだね」

また何を言われるか分かんないもんね。

今は私がかっちゃんとこころちゃんを別れさせたんだとか、
本当は私とかっちゃんが両想いだったのにこころちゃんが邪魔したんだとか、
かっちゃんとゆうれいがどっちかの取り合いでモメてるんだとかいろんなことを言われている。

誰も、全部否定も肯定もしなかった。
何かを言えば周りを喜ばせるだけだってみんながそれぞれに分かっていたから。
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