毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「お待たせ」

コンビニの入り口から少し逸れて立っていた私にかっちゃんが近づいてきた。

「かっちゃん!」

「ごめんな、待たせて。寒かっただろ?」

「全然平気」

「そう?じゃ、行こっか」

「かっちゃん待って。…なんで誘ってくれたの?」

「都合悪かった?」

「悪くないけど…でもだって…昨日の今日だし」

「だからじゃん。それとも結芽はあのままでもよかった?」

「まさか!」

「だよな。ほら、行くぞ」

「うん…!」

並んで歩くかっちゃんと私の間にはもう一人くらい入れそうな距離があった。
もしかしたら教室で並んでいる机と机の間のほうが狭いかもしれない。

かっちゃんの今の感情の熱量が分からないから、どんな話題に触れていいのか悩み過ぎて話題を出せないまま歩き続けた。

「結芽って門限あったっけ?」

「へっ…!?門限?特にないけど…暗くなるの早くなってきたから7時とか8時とかまでにはって感じかな?」

「そっか。けっこうゆっくりできるな」

「ゆっくり?うん…そうだね…?」

「今日さ、両親だけで飯行ってんだよ」

「かっちゃんは?」

「行かないって言った」

「なんで?もったいない」

「別に気分じゃなかったし、行かなかったら結芽と二人だけでゆっくり話せるだろ?」

「そのために断ったの?」

「うん」

これってドキドキしていいこと?
どんなことを話すのかは分からないけれど、かっちゃんが私と二人になることを理由にしてるなんて…この前までの私だったらそれだけでもっとかっちゃんのこと好きになっちゃうんだけど…。

かっちゃんの横顔をジッと見つめても本心は読み取れない。

言い聞かせても私の心臓も落ち着いてはくれなかった。
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