毒で苦い恋に、甘いフリをした。
かっちゃんのひとつひとつの仕草にいちいちドキドキしてしまう。

他意なんかないかもしれないのに。
これから悲しい話をするかもしれないのに。

かっちゃんの表情を見ていたらそうは思えなくて、仲直りできるのかななんて思っちゃう。
この期に及んでもまだ都合のいい私…。

「座れば?」

「あっ、うん」

四角いローテーブルと体全体を預けられるくらいの低反発のクッション。
かっちゃんは、自分はベッドにもたれるようにして座って、クッションを私に勧めてくれた。

体が沈み込んでいくみたいで、いくらなんでも寛ぎすぎているような気もする。

「結芽さー、今日ずっと俺のこと避けてた?」

「避けてたわけじゃないよ。ちゃんと話したいなとは思ってたし。ただずっと人に囲まれてたしちょっと気まずくて」

「ごめんな。気づいて俺がそっちに行けばよかったな」

「いやいや。チキった私が悪い」

かっちゃんがくすくす笑う。
楽しそうだった。

「なんで笑うの」

「結芽はやっぱ結芽だなーって」

「どういうこと?」

「ヤな女かと思ったら結局俺には一生気ぃ遣って遠慮するし。あんなことあっても誘われたら断れないし?臆病なのかなんなのか分かんなくなる」

「ディスってる?」

「安心してる。拒否られなくて」

「なんで私がかっちゃんを拒否んの…」

「昨日はさ、さすがに混乱してたし、俺被害者すぎんだろって思ってたけどさ」

「被害者だよかっちゃんは…。私のせいで傷つけてごめんね」

「でも結芽に言えなくさせてたのは俺だろ?」

「そんなこと…」

「あるよ。ずっと一緒に居たのに結芽になんとなく言われるまでは結芽の好きな奴が俺とか思いもしなかった」

「あはは…傷つくなぁ…冗談だけど」

「いや。傷つくよな。俺と結芽はそういう関係にはならないって決めつけてたってことだから。実際、怜と付き合うんだろうなって思ってたし」

「ずっと知ってたの?ゆうれいの気持ち」

「見てりゃ分かるじゃん。あいつ、あんっなに分かりやすいのにマジで気づいてなかったん?」

「気づいてないっていうか誰にでも距離感バグってんのかなって思ってたし」

「全然違ったよ。結芽には、違った」

「そうかなぁ。ゆうれいの気持ち知ってからもあんなことしてた私ってもしかして死んだほうがいい人間なのかも」

「なに言ってんだよ。怜なら一緒に死にかねない」

「あはは…」
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