毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ゆめ」

食べ終わって、ニカと黒崎くんは中庭でもうちょっと喋っていくって言うから、私は先に教室に戻っているところだった。

廊下でゆうれいに呼び止められた。

「ゆうれい?」

「さっきはありがとな。拒否んないでくれて」

「そんなことしないよ」

「気まずかった?」

「そりゃあ…ちょっとね?」

「うん。俺も、ドキドキした」

「なんで一緒に食べようって思ったの?」

「ゆめさ、もう風と仲直りできたんだな」

「えっ…うん、まぁ…」

「ニカちゃんとも喋れるようになってるしさ。ゆめがちゃんと前に進もうって頑張ってるんなら俺も頑張んなきゃね」

「でもゆうれいはキツくない?私と居るの…」

「友達でいることまで禁止されてないだろ?」

「ん…」

「じゃあ友達でいさせてよ。俺だけ除け者とかいじめだかんなー」

「なにそれ。人聞きの悪い」

「…よかった。ちゃんとゆめの呆れた顔だ」

「え?」

「俺に対して遠慮も見栄もない顔。そういうくったくないゆめの表情が好きだから」

「…はいはいっ!そーですかぁー。もう行くよ。昼休み終わっちゃう」

ゆうれいのそういう甘い?言葉にいちいち反応してちゃだめだ。

たぶん元々こういう人だったんだと思う。
それがあんな関係になっちゃったから、
言葉のひとつひとつにいちいち反応して、ゆうれいの言動を意識して、変になっちゃったんだ。

普通に友達に戻れるのなら私だってそうなりたい。
ゆうれいがそう望んでくれるのなら。
< 171 / 208 >

この作品をシェア

pagetop