毒で苦い恋に、甘いフリをした。
放課後になった。
鞄を持って立ち上がったかっちゃんが私に向かって言った。
いつもよりちょっと声が大きい気がした。

「本返しに行くけど一緒に行く?結芽が読みたがってた本、入ってたけど」

わざとみんなに意識させたんだと思う。
「前からそういう会話してたから」って、
だから一緒に行くんだって理由を聞かせておけば変に噂されることもないから。

「ほんと!?楽しみにしてたんだよねー!」

教室から出ていく私とかっちゃんの後ろで、女子のグループが「結局じゃん。つまんなっ」って言った。

私達が元に戻らなければ自分達がかっちゃんやゆうれいを独占できるかもしれない。

でも「元通り」なんかじゃない。
今は私がかっちゃんの彼女だもん。

みんなはそれを知らない。
大好きな人と共有する秘密は、恋を拗らせた私にはあまりにも甘すぎたんだ。
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