毒で苦い恋に、甘いフリをした。
十二月二十四日。

お昼の一時にかっちゃんと待ち合わせをした。
遅めのランチを食べてから、映画を観て、それからゆっくりイルミネーションを見に行く約束だった。

街中、人でいっぱいで、一時を回っても飲食店は満席状態だったし、
映画もどうにか二人分の座席が確保できたくらいだった。

「やっぱ人多いねー」

「冬休みだしクリスマスだもんな」

「うん。カップルばっかだね」

「俺らもじゃん」

「うん…」

「変な感じする?」

「変な感じ?」

「クリスマスに俺と一緒にいんの」

「するよー。まさかこんなこと叶うって思ってなかった。夢じゃないよね?」

「かわいー」

かっちゃんが私の右手をギュッて握った。
同時にスクリーンの照明が暗くなった。

映画は流行っているアニメ映画の監督の最新作だった。
今回は家族をテーマに描いたってテレビのインタビューで言っていた。

ラブストーリーじゃなくてよかったってちょっとだけ思った。

悲しい失恋シーンとかあったらさすがに気まずいもん。

映画が始まっても、右手はかっちゃんの左手の体温であったかいままだった。

このまま一生、映画が終わらなければいいのにって思った。
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