毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「そろそろうち行く?」

「そうだね。ちょっと寒くなってきたもんね」

かっちゃんが繋いだ手をコートのポケットに入れてくれた。

「手、すごい冷たい」

「手袋忘れちゃった」

「忘れてよかったじゃん」

「なんでー?」

「手袋なんかしてたらこうやってお迎えできないから」

「なにそれ」

ドキドキ、ドキドキ。

親友のままじゃ知ることはできなかった、かっちゃんの「彼氏」のカオ。

全部慣れてしまいたくないな。
どれだけ長く一緒に居ても、いつまでもかっちゃんにドキドキしていたい。

「今日おうちの人は?」

「冬休み入ったし姉貴連れて父さんの実家に泊まり」

「え?行かなくてよかったの?」

「クリスマスなんだから結芽優先に決まってんじゃん。それに高校生男子がひとりぼっちでも寂しくなんかないですー」

「さっき家族を大事にしなきゃって言ったばっかのくせに」

「帰省が決まったのは映画の前なのでノーカンだろ?」

「んー、まぁノーカンかな」

「だろ?」

「でもいいのかな。家族の人がお留守のときにお邪魔しちゃって」

「結芽が来るって知ってるから」

「そうなんだ…?」

家族公認だって思った。
こころちゃんとのこと、公認なのかなってちょっと前に嫉妬していたことを思い出した。

かっちゃんの彼女として認めてもらえてるのかな。

もっともっと、かっちゃんに相応しい女の子になろう。

心がぽかぽかしていたから、
かっちゃんと歩くクリスマスの夜は全然寒くなんかなかった。
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