毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「俺の部屋、行っといて」

かっちゃんのおうちに着いて、靴を脱ぎながらそう言われたから素直に頷いた。

「ケーキ持っていくね」

「え、用意しててくれたの?ごめんね…気が利かなくて…」

「そんなこと気にしないで?ほら早く、上がって」

「うん。ありがとう」

かっちゃんの部屋に入って、ドアの横のスイッチに触れた。

部屋がパッと明るくなる。
見慣れた家具。
見慣れた配色。

見慣れない、テーブルの中央に置かれた小さいキャンドル。

半透明の丸っこいグラスみたいな容器に包まれている。

かっちゃんの部屋でキャンドルなんて見たのは初めてだった。

クリスマスだから演出してくれたのかな。
かっちゃんって思っていたよりもロマンチストなのかも。

「お待たせ。なんで立ったままなの。座って、座って」

「ありがとう。キャンドル可愛いね」

「うん。好きだって言ってた香りにしたよ」

私が好きだって言った香りってなんだろう。
キャンドルの話をした記憶もないけれど、もしかしたらずっと前に話したのかもしれない。

かっちゃんは優しいからきっと憶えていてくれたんだ。
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