毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「やっぱ違うね。こころとは」

「なに…言ってるの………」

「結芽はさー、こころが好きな物の何もかもが嫌いだよな。笑っちゃうくらい正反対」

「かっちゃん?」

「生クリームたっぷりのケーキも果実の香りの紅茶も、それに似てるようなあまーい匂いのキャンドルも」

「ぜんぶ…こころちゃんの好きな物…?」

「そうだよ。ってか…あっはははは…ごめん。目の前に揃ったときの結芽の顔、めちゃくちゃ面白かった」

「かっちゃん…なんで?全部わざとやったの?」

「だからそう言ってんじゃん。こころが好きだって言ってたキャンドル。本当はプレゼントしようって思ってたんだけどできなかったし。こころが好きな物で埋め尽くしてあげたかったのに」

「私に優しくしてくれてたのは?言ってくれてたことは?」

「演技」

「演技…?なんでそんなことっ…!」

「なんでって、なんで?言ったじゃん。こころのこと忘れさせてって。結芽にはその義務があるよね?」

「そっ…そうかもしんないけど、本当に申し訳ないって思うけど、でもかっちゃん、私を好きになれるって言った…!」

「そうでも言わないとノらないだろ?」

「彼女だって言ってくれたことは?」

「うそ」

「かわいいって…言ってくれたことは?」

「うそ」

「私を好きにはなってくれない…?」

「なれない」

「こころちゃんを忘れさせて欲しいって言ったことは?」

「うーそ!忘れられるわけねぇだろ」

「私の…私の本気で好きだって気持ちを利用したの!?」

「お前がやってきたのはそういうことだろ!!!」
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