毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ゆうれいの感情だって私が決めることじゃない。私が執着しても突き放してても。私に執着して欲しいって願ってたのはゆうれいだよ…。こころちゃんの恋が叶わなかったことまで私のせいにされる筋合いないよ!」

「こころは俺のことなんか好きじゃなかったのにお前に復讐するために俺を搾取したんだよな。お前が俺を好きだったせいで。こころは俺を選んだ」

何を言ってもかっちゃんの表情は変わらない。
さっきの甘かったかっちゃんはもうどこにも居なくて、全部がこの日のために計画されていた行動だったって思ったら背筋が冷えた。

「私がかっちゃんを好きだったことすら間違いだったって言いたいの?」

「お前が俺を好きじゃなければ。せめてちゃんと怜に対して誠意があれば。お前の態度次第でこころだっていつかは諦められたかもしれない。俺だってただ片想いをしてれば済んだかもしれない」

「八つ当たりだよ!何もかも私のせいにしないでよ…。かっちゃん、言ってくれたじゃん…。人ひとりの人生までは背負いきれないって。だからどっかで許していかなきゃいけないって…」

「なんとでも言うよ。お前が騙されてその気になってさえくれれば」

「ひどい…。全部このための行動だったの?恋人同士しかしないようなことも全部」

「そっちのほうが裏切られたときの気持ち、何倍も傷つくだろ?」

嘲るように口の端だけで笑ったかっちゃんの顔は、見たことのない、怒りと憎しみが入り混じる表情だった。
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