毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「さっきから何を言ってるの?全然分かんないよ」

「…受験の日。同じ教室に怜もこころも居たんだよ」

「え…っと…だからそれでこころちゃんがゆうれいに恋をしたってやつでしょ…?」

「だーかーらー!俺もお前も!」

「え………」

高校受験の日。
かっちゃんと私は同じ教室だった。
そんなこと、忘れるはずがない。

受験で失敗しちゃったらかっちゃんと一緒に居られなくなる。
そんなことは絶対に嫌だからかっちゃんに弱音を吐きながらもギリギリまで復習をしていた。
心臓がバクバク鳴って周りなんて気にしていられなかった。

「俺さぁ、ずっと気づいてたんだよ。様子のおかしい女子のこと。もうすぐ試験が始まんのにジッと俯いて。青ざめた顔をして」

「こころちゃんのこと…」

「声を掛けようと思った。でも隣の男子…怜が声を掛けて。みるみるうちにこころの表情に生気が戻っていくみたいだった。その時の…安心したようにくしゃって笑ったこころの顔が忘れられなくなった」

「恋をしたのは…高校で同じクラスになったからじゃなかったの?」

「こころが怜を好きになったのと同じだ。俺も同じクラスになったとき、奇跡だって思った。それと同時にこころが怜に恋をしてしまってることにも気づいた。だから怜に近づいた」

「それは…陥れるため?でもかっちゃん、ゆうれいのことも大事だって…」

「最初はどんな奴か探ってやろうって思ってたよ。でもたった一日喋っただけでも分かった。あー、女子じゃなくてもこいつは誰でも惹きつけるちからがあるって。男女とか友達だろうが他人だろうが人を見捨てることができない人間なんだって。悔しいけど、怜には勝てる気しなかった」

「でもこころちゃんのことはずっと好きだったんだね…」

「それでもよかった。こころが怜を好きなままでも。それなら俺は自分ができることを頑張ろうって。ちょっとでも一緒に居たくてすげぇ早く登校したりしてさ」

「だから…私のことがずっと邪魔だったの?」

「そうだよ」

きっぱりと言ったかっちゃんの言葉に胸が締めつけられる。

かっちゃんがこころちゃんに恋をした日からずっと、私にくれていた言葉も全部偽りだったんだ。
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