毒で苦い恋に、甘いフリをした。
クリスマス。
ニカの傘にあった虹のロゴマーク。

ただの作り物だけど、それでも奇跡が起きたのなら、もうゆうれいの手を離さなきゃって決心がついた。
それが悲しいお別れでも。

ほんの少しだけ、素敵な奇跡の中で。

「ゆめが約束憶えてくれてたこと、ほんとにうれしかった」

「あんな変な約束、滅多にないからね」

「偽物でもよかった。そんな奇跡が起きるなら俺だってけじめつけなきゃじゃん?」

「うん。私も、おんなじ気持ちで決意できたよ」

「おそろいだね?」

「んー、そうだね?」

「最後まで好きな女の子の前で情けない男でいたくないし?」

「もー…」

「あのさ、俺とは元に戻んなくてもいいよ。でも、みんなとは戻って欲しいな」

「なんで…」

「やっぱゆめのことが好きだからだよ」

「意味分かんない」

「ゆめのことが好きだから、ゆめには幸せでいて欲しい。泣いてる顔なんか見たくない」

ゆうれいの真っさらな、今でも変わらない想いを受けて、私の中にあるのは…。





かっちゃん。
今日も、何年経っても私が忘れられてしまっても変わらずあなたが好きです。

あなたのハッピーエンドの先に、私の幸せが無くても。

ゆうれいと過ごした最低な時間は取り消せない。
私の「好き」はもう、きれいなんかじゃない。
かっちゃんにも二度と、本当に純粋な気持ちではもう届かない。

ゆうれいを親友としての愛情で守っていくことも、きっともうできない。

それでもいつか…いつかきっと…。

「何年後かにもし再会とかしちゃってさ、今を笑い話にできたらまた親友になれるかな?」

「や、その前にこの一年間が地獄だろ」

「あはは…うん、そうだね」

「ま、でも地獄には居て欲しくないので。ゆめが笑って卒業できる一年間にはしてあげますよ」

「あら、かっこいい」

「でしょ。ゆめ…?」

「ん?」

「好きだったよ。本当に。誰よりも。何があっても。好きだった。ごめんね?ゆめのヒーローになれなくて」

俯いて溢れる涙を隠した。
涙のせいで廊下がかすむ。

ゆうれいが鼻をすする音が聞こえた。
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