毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「結芽っ!」

後ろから腕を掴まれて、振り返った。

「ニカ!?」

涙を流す私と、神妙な表情のゆうれいを交互に見て、
ニカは呆れた顔をした。

「ちょっと、あんた達またやってんの?」

「違う違う、違うから!お別れの儀式」

慌てたゆうれいに、ニカは溜め息をついた。

「はぁ?まぁいいや。結芽、探したよ」

「なんで…?」

「これ」

「…チョコ?」

うすい水色の包みを開けたら、おしゃれなパッケージの生チョコだった。

「友チョコ。二月に渡せなかったから。ちゃんと買い直したんだよ」

「え、なんで…」

「もう友達やめようって思った」

「うん…」

「本当に軽蔑してやる!って。もう知らないって見捨てようって思った。風に聞いたよ」

「クリスマスのこと?」

「うん。あんたを許したふりしたことも目的も全部。風は被害者だから仕返しくらいは許されるかもとかちょっと思っちゃったけどさ」

「そうだよ。かっちゃんは悪くない」

「結芽を救ってあげられなかった私は悪いよ」

「そんなわけないじゃん!」

「ううん。親友が自分をダメにしてまで恋をして苦しんで壊れていって。そんな結芽を私は見離そうとした。一人ぼっちにした。結芽にもっとぶつかって、大喧嘩になったとしても離れなきゃよかった。ずっと後悔してた」

「ニカ…優しすぎるよ…」

「友達でしょ」

「ニカ…」

ニカの声が震えている。

新学期なのに。
新しい一歩を踏み出す日に、私達は泣いてばっかりだ。
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