毒で苦い恋に、甘いフリをした。
好きなひとに大事だって思ってもらえるのなら、それってすごく幸せなことだと思う。

なのになんで、泣きそうになっちゃうんだろう。

そばに居られるだけで、
人として大切な存在でいられるだけで幸せなはずなのに、でもこころちゃんは違うって思ってしまう。

うれしいときに、おいしい物を食べたとき、初めて見る花を見つけたとき、悲しくて寂しくなったときも、
きっとかっちゃんの中に最初に浮かんでくるのはこころちゃんの顔なんだろう。

友達のままじゃできないこと。
友達のままじゃ言えないこと。

その全部がこころちゃんには叶う権利がある。

私には無い。

これ以上かっちゃんを見つめていたら涙が出そうだったから、
「眠たくなちゃった」なんて嘘をついて毛布を頭から被った。

「ん。じゃあお大事にな」

毛布の上から頭をぽんぽんってしてくれた。

毛布越しだから伝わらない体温。
分かんないままで良かったって思った。
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