毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ほんとにどうしたの?」

「どーもしてない。ゆめが言い張るから事実を言っただけ」

「変…なの…。そんな風に思ったことないくせに」

ぶわって一際強い風が吹いて、
カーテンが私とゆうれいを包み込むように舞った。

スッて耳元に近づいたゆうれいが「風が言ってたら信じてた?」って小さい声で言った。

「そんなこと…」

「風は言わない?」

「…」

かっちゃんは私にそんな胸キュンワード、きっと言ったことない。
これからだって言うわけない。

それがはっきりと分かっていて、
ゆうれいにも見透かされてるみたいで、やっぱり私はかっちゃんの中に、恋愛対象としては存在してないんだって突きつけられたみたいだった。

「だってみんなだって言ってたじゃん…。かっちゃんはこころちゃんと付き合ってるみたいに見えるんだって。甘々なセリフだってこころちゃんにならきっと言ってるよ…」

「そうやって勝手に想像して、勝手に傷ついてんの?」

「っ…なんでそんな嫌な言い方すんの!?」

「だって風がこころちゃんと二人っきりのときにどんなふうなのかなんて想像するしかないじゃん。事実かも分かんないことで必要以上に嫉妬して傷つく恋なんて、楽しい?」

「なんでそれで終わりだって決めつけんの。今はそうかもしんないけど…もしかしたらってこともあるかもしんないじゃん」

「本当にそう思ってる?」

「本当にって…」

「本当にゆめの恋は叶うと思ってる?風は一途だよ。すごくね」

「ゆうれい、いじわるすぎる」

「いじわるだよ、俺は。だってゆめの恋なんて終わって欲しいんだもん」

「は…」
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