毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「知らなかった?ゆめの恋が早く終わってしまえばいいのにってずーっと思ってんの。だって、じゃなきゃ俺の恋も始まんないままだしね」

「さいってい…。私のこと好きだって言ってくれたけど、自分のために好きなひとの恋が終わるように願うなんてひどすぎるよ!」

「綺麗事言わないで?ゆめだって思ってるくせに。だって風の恋が叶ったらゆめはずーっと苦しいままなんだよ?でも俺は違う。ゆめが苦しいことから俺なら引っ張り出してあげられる。誰かを好きになるのは苦しいことばっかりじゃないって教えてあげるよ?だから早く逃げてきてよ」

ゆうれいの言葉は私を傷つける。
私の恋は無謀だってはっきりと叩きつけられる。

それなのに、私に甘い。

「ゆうれいは傷ついてる私が好きなの…?」

「ん?」

「私が傷ついてメソメソして可哀想だから好きなの?傷ついてる私を守ってヒーローにでもなったつもり?」

「ゆめはまだほんとの初恋を知らないんだよ」

「初恋って…」

「俺だって知らないけどね?ほんとに好きなひととまだ付き合えてないからさ。だから俺も初恋はまだってことで!ゆめが不幸だったらいーなって思ってるわけじゃなくてさ?ただ、ずっとそうやって苦しそうな顔してるくらいなら俺がもっとゆめの可愛い表情、引き出してあげたいなって。思っただけだよ?」
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