毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「バカ………じゃないの…」

カタンって音がして、教室の後ろのドアが開けられた。

「こころちゃん…?」

「あれ…茅野さん、柳くん。まだ残ってたの?」

「うん、日直だったから。ゆうれい、待っててくれたみたいで」

「そうなんだ?」

「こころちゃんは?かっちゃんと一緒じゃないの?」

「うんっ。今日ね、おうちに遊びに行く約束してるんだけど。忘れ物しちゃって。あー、あったあった」

机の中から引っ張り出した漫画本をこころちゃんは胸の前でギュッと包んで、私達ににっこり微笑みかけた。

かっちゃんが好きな漫画の単行本だった。

「借りたの?」

「うん。面白いから読んで欲しいって。ほんとに面白くて授業中に一気に読んじゃった」

ペロって小さく覗かせた舌が、完璧に、可愛い女の子。

「こころちゃんって授業中に漫画読んだりするんだ?」

「面白かったし早く感想言いたかったから。内緒にしてね?」

じゃあねって私達に手を振って、こころちゃんは行ってしまった。

私を見ていたゆうれいがつぶやいた。
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