毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ぜんっぜん気づかんかったわ」

「私も聞かされたの今日だもん。びっくりしたよ。でも腑に落ちた」

「なにが?」

「ニカが誰と付き合っても長く続かなかったことも。黒崎くんが私と遊びたいって言ってたのも本当はニカを誘いたかったんだよ」

「あー…」

「だからゆうれいの考察は大はずれでしたー」

「考察?」

「私が可愛いからとかなんとか!ほんっと、女の子に失礼なこと言ったんだから謝ってよね!」

「なんで?ゆめが可愛いのは事実じゃん。クラスの男子、よく言ってるよ?俺らが憎いって」

「なにそれ!そんなわけないじゃん」

「事実なのに…。ま、いいや。事情は分かったし協力はするよ。でも風は?誘うん?」

「んー…そりゃ花火は一緒に見たいけど…」

「市原さんも来るよね?」

「たぶん…てか絶対」

「でもまぁいいじゃん。誘うだけ誘えば?思い出だし」

「…変なの」

「ん?」

「私の恋を壊したいんじゃないの?そこは協力するの?」

「ばーか」

「え…」

ゆうれいが壁に背中をつけて立っていた私をもっと壁に押しつけるように体を寄せてきた。

周りにいた女子達の視線が痛い。
ゆうれいこそ本当に自覚して欲しい…自分は常に人に見られてる対象だってことを…。

「風と市原さんのことを見て傷ついてるゆめの傷口に付け込んで優しくして、ゆめがフラッとこっちに倒れてこないかなーって」

「さいてー」

「なんとでも言って?どんな手を使ってでも、もうゆめのこと諦めないから」

私の髪に触れながら、ゆうれいの指先が耳の裏に触れた。

ピクって反応してしまった私に気がついて、
ゆうれいは八重歯を覗かせた。

やっぱり小悪魔だ…。

これは厳戒態勢を張るしかない。
ほんと、なにされちゃうか分かんなくなってきた…!

「もー帰る!」

「うんっ。帰ろー」

「一緒に帰るなんて言ってないでしょ!ついてこないで!」

「なんで。一緒に帰ろーぜー」

「うるさい徒歩組!」
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