毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ゆうれいってさ、自分の顔がイイって自覚ある?」

「思ったこともないんだから自覚なんてないけど」

「へぇー。だったら持ったほうがいいよ。せっかくイケメンなのにきっしょいことばっか言っててもったいないから」

「ゆめはさ、自分が可愛いって自覚ある?」

「あるわけないでしょ」

「じゃあ持ったほうがいいよ。せっかく可愛い顔してんのに口悪いことばっか言っててもったいないから」

ニコッて可愛く微笑む顔が憎たらしい。

「かっちゃんはイケメンだし口も悪くないしキモいことも言わないのに」

「こころちゃんだって自分を好きだって言ってる男に向かって憎まれ口ばっか叩かないかも」

「かっちゃんは好きな子に向かってゾワゾワすること言ったり神経逆撫でしたりしない!」

「するよ。風だって男なんだから」

「なんでよ!そんなことしたって嫌われるだけじゃん!」

「あのさぁ、ゆめ。大切で大切でどうしようもないときって、ちょっとくらい相手を傷つけてみたいなって思うこと、ない?」

「そんなこと…」

「ないって言い切れないでしょ?だって人間なんてさ、いい事より嫌な事のほうが記憶に残るんだから」

「いい事も消えたりしないよ」

「しないけどさ。どんなに優しくして親切にしてもたった一回された嫌なことって強く記憶に残るじゃん。あのときの声、あのときの顔、ヤだったなーって。そうやってゆめの中にほんのちょっとでも傷を残したらさ、いつまでも俺のこと忘れないでいてくれるのかなって」
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