毒で苦い恋に、甘いフリをした。
ゆっくりと坂を登っていく私達を何人もの生徒達が追い越していく。

追い越して、わざと振り返ってゆうれいを見たり、手を振ったりしていく女子がほとんどだった。

ゆうれいは顔がイイ。
飴玉みたいにまん丸で、大きくて真っ黒な瞳。

いつもニコニコしてるみたいに口角の上がったくちびる。

「ほんとに笑ったら口角がつむじまで届きそうだよ」なんてからかったら、
「くそつまんない」って髪の毛をぐしゃぐしゃにされてしまう。

可愛い顔と、威圧感を与えないサイズの身長、
やわらかい口調で女子からの人気が高くて、

なのに気さくで嫌味が無いから男子からのやっかみも無くて、誰からでも好かれるタイプの人間だった。

ゆうれいとは入学した高一のとき、同じクラスになったことがきっかけで仲良くなった。

最初に仲良くなったのは私じゃなくて、
私の好きな人、成田風(なりたかぜ)だったんだけど。
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