毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「私はまだかっちゃんに気持ち、伝えてないんだよね」

「うん」

「失恋したのは事実なんだけどさ、まだはっきりとフラれてもないわけで…」

「彼女できちゃったら一緒じゃない?」

「でも私に対する気持ちは聞いてないじゃん。それこそイマジナリーじゃん。今まで“私はかっちゃんにとってこうなんだろうな”って勝手に想像してただけで」

「え、言うの?メンタルつよ」

「いやさすがに今は言えないけど」

「なんだよ…」

「でもはっきりとはフラれてないから!…まだ好きでいたらキモいかな…」

「…別にいいんじゃん?そんなこと誰かにダメだって言われたからってはい、そーですかって切り替えられるもんじゃないだろ」

「ん…」

「でもさぁ、ゆめ」

「なに?」

「もしかしたら切り替えられるかもしれないこと、したいんだけど?」

「なにそれ」

「風のこと好きで居続けるのは自由なんだけどさ。まー、ゆめの言った通り、チャンスだとも思ってるよ?」

「やっぱり!」

「思ってるに決まってんじゃん。今まで散々ゆめの傷に付け込んできたのに、今だけただ優しくするわけないじゃん」

ゆうれいの手のひらが私の後頭部に回される。

顔が近い。
ちょっと細められた目。
ペロって覗いた舌先。

「ゆうれい?ちょっと…!」

くちびるの端っこだけに軽くゆうれいのくちびるがかすめていった。
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