毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「俺とはまだ付き合ってくれない?」

「つ…ッ…付き合わないよ…!」

「ふーん。そっか、残念」

後頭部に手のひらを添えたまま、左手は腰に添えられて、
そのままベッドに押し倒されてしまった。

「ねぇ、ちょっと!マジで冗談やめてよ!」

「なんで?ジョーダンだなんて言ってないけど」

「本気で怒るよ!?」

「いいよ。本気で怒ってるなら本気で逃げなきゃ。ほら」

ゆうれいの体のどこを押しても、腕をふりほどこうとしても強いちからに勝てない。

「やだ…かっちゃん…助け………」

そのときだった。

今になってやっと、涙が流れた。
そうしたらようやく、自分の状況がスッと頭で理解できてしまった。

私が学校をサボっている本当の理由にかっちゃんは気づかない。

ゆうれいと今、こうなっていることを予想すらしない。

私がかっちゃんに助けを求めても、かっちゃんが一番に耳を傾ける声は、私じゃない。

私の中心は出会ってからずっとかっちゃんだったのに、
かっちゃんは違う。

今までも、これからもずっと。
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