毒で苦い恋に、甘いフリをした。
体のちからが抜けていく。

状況を理解すればするほどに、
これから先、変わらずにかっちゃんを思い続けても、もう戻らないってことを実感していく。

「なんでこんなことするの」

「好きだからだよ。俺にだってゆめの苦しいことを忘れさせてあげるくらいできるでしょ?」

「こんなことしてもなんにもなんない。ゆうれいを好きにはならない」

「今日は一段と俺を傷つけるんだね?気が晴れる?それならいいよ。もっと俺の感情をぐちゃぐちゃにして?そしたら俺だってもっと酷くなれるから」

ゆうれいのキスを、甘い指先を拒む気力がもう無かった。

こんなことをして何になるんだろう。
なんにもならないことくらい分かってる。

ただ二人で最低になっていくだけだ。

なんにも悪くないかっちゃんとこころちゃんへの当てつけに。

なんにも悪くないゆうれいの気持ちを利用して。

失恋から目を逸らすために。
大好きだったひとへの気持ちを汚してしまえば、
自分が汚れてしまえば、もう綺麗事で傷つくこともない。

私と最低になっていくことをゆうれいが望むのなら、もうそれでいいじゃんって思ってしまった。

それでしか頭の中からかっちゃんを消すことができない。

好きでいる権利なんか無いって思うことでしか、
忘れられる方法が分からなかった。

なんて愚かなんだろう。
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