毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「わたし、最低。地獄に落ちるかも」

「なんで?」

「失恋なんかで学校サボって、………こんなことしちゃって」

「後悔してる?」

「してる」

「はっきり言っちゃうんだぁ。かわいそうに。付き合ってもない親友に全部あげちゃったね」

「だからさぁ…ゆうれいも相当最低だよね?よくそんなこと言えるね」

「分かんないの?挑発してんの。ゆめはぜーんぶ俺のものになったんだよって」

「なってないから」

「心だけは風を好きなままだって?」

「…やめて。そんな純粋ぶったこと、もう言えないよ」

「じゃあなんで俺のこと好きにならないの?ここまで来ちゃったらさ、そうなったほうが体裁的にもいいと思うんだけど」

ギュッとブランケットの裾を持って頭の先まですっぽりと被った私に、ゆうれいが覆い被さってくる。

ブランケットがふわっと待って、狭い秘密基地みたいになった。

「ちょっと…!」

「俺は後悔してないし、まだ諦めてないよ。ゆめのことは俺が全部肯定してあげる。俺に甘やかされて甘やかされてダメになっちゃってもいいからね?」

「ごめん。ゆうれい、ごめんなさい。やっぱ私、最低だ。失恋したからってヤケになってた。ゆうれいの気持ちを利用した。学校サボってこんなことして…最低だよ。ごめんなさい。今日のことは忘れて…」

ゆうれいの体をグッと押して背中を向けた。

後ろから抱きしめてくる体温が熱かった。
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