毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「あのさっ!かっちゃん…!」

「ん?どーした?」

いきなり大声でかっちゃんを呼んだ私にきょとんってしながらも、かっちゃんは微笑んでくれた。

「こころちゃんのこと、よかったね。早く言ってくれればよかったのにー」

「あ、あぁ…。昨日言おうと思ったんだけどさ」

「びっくりしたよ。ごめんね、そんな時に早退しちゃって。いろいろ聞きたかったんだけどな」

「からかうなよ」

「こころちゃんのことはね?でもかっちゃんのことはからかっちゃうかも」

「お前なー」

「それでさ、かっちゃん。夏休みなんだけど」

膝の上に乗せていた手のひらをニカがギュッと握ってくれた。

こころちゃんの話題を振ることも、
夏休みの話をすることも心臓がバクバクして吐いちゃいそうだった。

ニカはそれに気づいてるから心配そうに私を見つめている。

「今ね、私達とゆうれいと黒崎くんで花火大会の約束してるんだけど」

「黒崎?なんで?珍しいな」

「ニカと黒崎くんって幼馴染なんだよ。それで久しぶりに一緒にお出掛けしたいねって話になって」

「へー。そうなんだ?」

「黒崎くん、男子一人じゃ気まずいでしょ?それで無理矢理ゆうれいも誘ったんだけど」

「あはは!無理矢理」

「そ。だからゆうれいと黒崎くんが気まずかったら元も子もないからさー。かっちゃんとこころちゃんも来てくれない?」

「俺らも?」

「ん…。初めての夏休みだし花火大会だから邪魔しちゃ悪いかなって思うんだけどさ…。二人も緊張しちゃってギクシャクしちゃったらいけないでしょ?協力しあおうってことで!どうかな?」

「お前は冷やかしたいだけだろー?まぁ、俺はいいけど。こころは…」

かっちゃんって、こころちゃんのこと呼び捨てにしてたかなって思った。

こころちゃんか市原さんだった気がしたけれど、
付き合ってるんだし当たり前で、

そんな小さな変化にすら今更気づくような鈍感な私だ。
負けるに決まってる。

っていうか、散々二人だけで遊んでるのに花火大会が今更気まずいわけないじゃん…。

なんなら私とかっちゃんが二人きりにされたほうが、もう気まずいよ。
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