毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ニカ…」

「怜…?なにやって…結芽?ちょっと、泣いてんの?」

ゆうれいとおんなじように私の前に来たニカが、両手で私の頬に触れた。

「怜!?あんたなんかしたの!?」

「ちが…っ、違うのニカ、誤解だよ」

「ニカちゃん、俺」

「ニカ、ほんとに誤解だから。なんか目に入っちゃって…見てくれてたの」

「ほんとに?」

ニカが疑ってる目でゆうれいを見た。
ニカに見られたゆうれいは、コクンって頷いた。

「そっか…ごめん。変な言い方して。結芽、見せて。泣くほど痛かったの?」

ニカが私の目をジッと覗き込む。
パッと逸らして、手の甲で目をこすった。

「こすっちゃダメ」

ゆうれいが手を伸ばして、私の動きを止める。

「てかたぶん…ゆうれいのせいだよー」

「なんで?」

「かっちゃん達とサッカーしてたでしょ?運動場の砂、シャツについてんじゃない?」

「あー…そっか。そうかも」

「もー。アイメイク取れちゃうじゃん…」

「結芽、帰ったらちゃんと目洗いなね」

「うん。ニカありがと」

「俺、戻るわ。てかそろそろあいつらが戻ってくるかも」

「ニカ!帰ろ!」

「え、風がいるんならみんなで帰れば?」

「いいから、いいから。じゃあね、ゆうれい」

鞄を取って、ニカの腕を引いて教室から出た。
ニカはちょっと不思議そうにしていたけれど、何も言わないでいてくれた。
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