毒で苦い恋に、甘いフリをした。
泣いてしまったのは、ゆうれいにされようとしたことが怖かったからじゃない。

ゆうれいはきっと、私のことが惨めだなんて笑ってなんかいなかった。

一人で泣いてしまいそうな私を慰める方法がいつも衝動的で、私は拒めない。

ちからのせいにして、ゆうれいが私に向ける熱に甘えてるんだ。

このままゆうれいが望むように、
かっちゃんのことなんてさっさと忘れてゆうれいだけになってしまえばラクなんだと思う。

自分が守られたいためだけに、
大切な親友の心を壊してしまっても。

そうやって自分を一番惨めにしているのは、私自身だった。

その日の夜だった。

「ゆめー、怜くん来てるわよ」

階段の下から、部屋に居る私をお母さんが呼んだ。

「えー?ゆうれい?」

「もー、あんたは…その呼び方やめなさい!ごめんねぇ、怜くん」

「いいんです。ゆめだけ特別なんで」

「あら」

「ちょっとお母さんに変なこと言わないでよ!」

白のロングTシャツに黒のスキニーパンツ。
ラフな格好でお散歩でもしてたのかな。

教室でのことがあったばっかりだからちょっと気まずいんだけど…。

「すみません。遅い時間に。ゆめに数学のノート貸したままだったこと思い出して」

「え、ノート?」

「あんたってほんとに…だらしないんだから!上がって上がって!ほら、結芽!お部屋で待っててもらって。お茶持っていくから」

「いえ、すぐ帰るんで!」

「いいじゃない、せっかく来てくれたんだから。お父さんもまだ帰ってないし」
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