毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「教室でゆうれいがキス…しようとしてるってことは分かってたよ?でもね、泣いちゃったのはゆうれいにされようとしたことが怖かったからじゃないの」

「じゃあなんで…ほんとに目が痛かったわけじゃないだろ…」

「聞いてたでしょ、かっちゃんとの会話。惨めだった。誰にもなんにも言われてなんかないのに、私自身が惨めだって思った」

「風を好きでいることが?」

「好きだって伝えても信じてもらえなかったことが。今までの、どの私を見ても“もしかして”とすら思ってなかったことも、ゆうれいとのことを応援されたことも」

「俺のせい?」

「違くて!かっちゃんは、ゆうれいと私の恋を本気で応援できるくらい、1ミリも私への恋愛感情は無かったんだって思い知らされた。それなのに私は一人で大失恋して学校までサボって、ゆうれいの気持ちを利用した」

「ゆめの傷に付け込んだのは俺だろ」

「ゆうれいは私のことが惨めだなんて笑ってなんかなかったのに、情けなさとか悲しさで八つ当たりもした。それでもゆうれいが私を求めるなら…私は大好きな人を失くしても一人ぼっちじゃないって思えるならもうそれでもいっかって…私ほんとは思ってたんだと思う…」

ゆうれいが立ち上がって、私の隣に腰をおろした。

いつもみたいにすぐ触れてくることはしなかった。

「ゆうれいが望むなら、かっちゃんのことなんてさっさと忘れてゆうれいだけになってしまえばラクなんだと思う。自分の心を守るためだけに。大切に思ってるゆうれいの心を壊してしまっても…。そう思ってることを急にすごく自覚して…自分が許せなくて…」

「それって俺のこと、男として好きってこと?」

「男としてっていうのは…違うと思う」

「あらら。きみってほんと、素直だよね。じゃあなんで俺に体、許したの」

「ちょっと…ヤケになってたし…」

「はいはい。ほんと…ヤな女…」

「それでもいいって…!」

「ずっる。こういうときだけそゆこと言うんだ?」

「ごめんなさい」

「はぁー…ジョーダンだよ。反撃くらいさせてよ」

「冗談なんかじゃないでしょ。ゆうれいには怒る権利があって…。もうとっくにフラれてんのにいつまでも気持ち悪い私が悪いんだから…」

「怒ってない。怒るわけないじゃん。俺が望んだんだから」
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