毒で苦い恋に、甘いフリをした。
ゆうれいにいつもより弱いちからでギュッてされた。

私の右肩に顎を乗せて、囁くように喋るゆうれいの声が耳のすぐ近くにあってくすぐったい。

「ゆうれいに全部許すくらいならけじめつけなきゃいけないよね…」

「俺はそうしてくれたら嬉しいけどね。でも…最低でも惨めでも私利私欲のためでも利用されてるんだとしてもゆめのそばに居たいって言ったのは俺だし」

「もう離れていいんだよ。こんな風になっても私はまだ…」

「まだ風に期待してんの?」

「それは…」

「…してんだね。ほんと、バカみたい」

「ひどい…」

「事実だもん」

私を見つめる目。

小さく息をついて、くちびるに触れるか触れないかの場所にキスをしたゆうれいを、拒めなかった。

「もう二度と触れないでって言うなら今のうちだよ」

「触れないって…?どこまで?」

「は………ほんと、サイテーな女。触れないって言うのはぁー、全部に決まってんじゃん。指一本、二度と触れない。前みたいにちゃんと、“ただの”親友に戻るよ」

「そっか…」

「ねぇ」

「うん」

「自分が今どんな顔してるか分かってる?」

「え…」

「それは嫌だって思ってるって捉えられてもしょーがない顔してるけど、だいじょうぶ?」

「そんなことっ…」

「まだ風のこと好きでしょ」

「………うん」

「俺のことは恋愛感情では好きじゃないでしょ?」

「………」

「でも、もう無かったことにはできないんだ?」

「そんなこと…」

「あるよね?なんで?」

「ちがっ…」

キュッとつむった目。

乱暴にキスをしながら、ゆうれいが雑にベッドに押し倒してきた。

「風のこと、考えなくて済むからでしょ」
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