毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ゆめ…かわいい」

私に触れながらかすれた声でささやくひと。
愛情はある。大切だと本心で思う。
なのに彼が望む種類の愛情を私は向けることができない。
それなのに私利私欲で求めている。
こんなクズな私を、ゆうれいは突き放せない。

「なんでそんなことばっか言うの」

「ほんとのことだから」

「こんなときにそんなことばっか…言わないで…っ」

「こんなときじゃないとちゃんと聞いてくんないじゃん」

ぬるいキス。

ぬるい毒。

私をダメにしたって
メリットなんか無いんだってば…。

何度あなたの肌に触れても、
その声で、沢山の女の子が「欲しい」って望む笑顔で好きだって言われても。

私があなたにあげられるものは、
抜けない毒と消せない傷だけなんだ。

それが分かっているくせに、
執着しているのだって私自身だ。

私を好きな、あなたのせいにして。

クズで最低な私をゆうれいが拒まない限り、私はどんどん堕ちていく。
こんな風になるくらいなら、本当に手放さなきゃいけないものが何かも理解しているくせに。

かっちゃん一人を私の世界から失くしてしまえば。
抱いていた感情なんて嘘だったみたいに、友達の顔をして笑い合って、当たり前にあった日常を繰り返していけば。

元に戻れるはずだった。
何も変わらずに、ゆうれいの冗談や憎まれ口を交わし合って。

そうやって繰り返す平凡な日常が幸せなはずだったのに。
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