毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ね、もう終わりにしていいんだよ?」

「なんで?」

「しんどいでしょ」

「しんどいって?」

「私とこうやって…ダメになってくの」

くちびるとくちびるが触れ合う。
かすめるだけのぬるいキス。

目は笑ってなんかないくせに、
口角だけを上げて、ゆうれいは笑ったフリをした。

「もう今更…離れたら死んじゃうかも」

「大袈裟だよ。このままずっと…このままのほうが死んじゃうかも」

「だったらこのまま死んじゃいたい」

「え?」

「ゆめが俺を求めてくれてるなら。居なくならないうちに、このまま死んじゃいたい」

「ばかだよ」

「そうかな?」

「うん。すっごくばか」

「それでもいーや。大好きだよ」

「ほんとばかだよ…全然分かんない!ゆうれいのほうが被害者じゃんっ…こんな風に扱われて、都合のいいように求められて。それでも好きとかおかしいよ」

「ごめん、もう手遅れ。知っちゃったんだからしょーがないじゃん。ゆめを抱きしめたときにやっぱ好きだって思っちゃうんだよ。俺がもう後戻りできないの。傷つけてるとか最低とか後悔してるならさ、もうどこまでも付き合ってよ?どこまでも…もう一人じゃいらんないくらいにさ」

かっちゃんじゃない、違う体。違う体温。
好きだよって囁かれながらあなたを想った。あなたは絶対に私を好きにはならない。

私の好きなひとは今日もあの子のことが好きで、
私はきっと、明日からも親友の顔をして笑う。

こんなことになっても、もう忘れたい、忘れなきゃって言い聞かせながらも、あわよくばあなたの恋が全部壊れてしまえと繰り返し願いながら。

ゆうれいから差し出された毒はあまりにも都合がよくて、甘くて、痛い。

恋に傷つかないために、差し出された毒に手を伸ばす。
どんなに想っても私とかっちゃんのハッピーエンドが交わらないのなら…。

こんなにクズな私だから、こんなに心が汚れてしまった私だから、
もうかっちゃんを好きでいる資格はないんだって納得するためだけに。

これ以上、あなたを思わなくて済むように。

ゆうれいの心を壊し続ける。
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