毒で苦い恋に、甘いフリをした。

五年目のさよならを

何事もなかったかのように、毎日を繰り返した。

かっちゃんの前では当たり前に今まで通りの顔で笑って、
ゆうれいとも何も変わらない親友のままでみんなの前では振る舞っていた。

「あっついねー…暑すぎる…!」

ポタポタとアスファルトに滴るソーダ味のアイスキャンディーを忌々しそうに見ながら、ニカは愚痴をこぼしている。

「ほんとに…年々太陽が異常事態…」

昨日から、遂に夏休みに入った。

半月後には約束していた花火大会だ。
ニカと遊びながら、黒崎くんやかっちゃん達にメッセージを送りあった。

ニカは黒崎くんとこころちゃんに、
私はゆうれいとかっちゃんに。

お昼は洋服を見に行ったり、カフェでのんびり過ごして、
別に目的はないんだけど、ちょっと歩こうってことになって、外に出てしまった。

まだ三時を回ったところだった。
当たり前に太陽が照りつけている。

さっきまでカフェで冷たいドリンクを飲んでいたくせに、
逃げるようにコンビニに入って、アイスを買った。

コンビニの看板の下の小さな影に入り込んで、
暑い暑いって繰り返しながらニカとアイスを食べた。

さっさと室内に入ればいいのに、私達は何をやっているんだろう。

「もう慣れた?」

食べ終わったアイスの棒を指先で振りながら、ニカが言った。

「慣れたって?」

「風達のこと!」

「あー、慣れたっていうか、それならそれで受け入れるしかないよねって感じ?」

「ふーん。やっぱそういうもんかね」

「そういうもんって?」

「諦めなきゃいけないんだなって。なんかさー、私だって黒崎のことずっと好きだったわけじゃん?」

「そうだね」

「ずっとだから何回も黒崎が誰かと付き合うのとかも見てきたよ。正直最初のほうは結構落ち込んだりもしたし。そのたびにさ、時間なんて関係ないんだなって思ってた」

「時間…そうだね」

「結芽もそうじゃん?風と長い時間一緒に居たけどさ、急に出会った市原さんと、だし…それでながーい時間が全部無くなっちゃうの、なかなか受け入れられるもんじゃないよ…」

ニカがポンって私の頭に手のひらを乗せた。

太陽の熱なんかじゃない。
ニカのあったかさに胸がギュッてなって、痛かった。

私が逃げるためにしていることをニカには絶対に知られたくないって思った。

そのたびに早くこんなことはやめなきゃって思うのに、かっちゃんのことを少しでも考えた瞬間に、またゆうれいに逃げたくなってしまう。

このまま失恋して、ただ泣いて泣いて、忘れてしまう努力さえしていれば、
この恋は美談のまま終わりにできたのかな。
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