毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「あー、男子達待ってるから行こ」

ニカが私の袖を引く。

「うん」

三人が待っている場所に近づくたびに、
かっちゃんの視線がこころちゃんばっかりを追っていることに気づくたびに、やっぱりお揃いの浴衣なんて早く脱いじゃいたいって思った。

「食べてないじゃん」

握りしめているりんごあめを指さしてゆうれいが言った。

「うん…喋るのに夢中だった」

「食べる?」

カップから長い竹串に唐揚げを刺して、ゆうれいが差し出してくれたけれど首を横に振った。

「ゆめ、揚げた鶏好きじゃん」

「なにその怖い言い方」

「あはははは。お腹空くでしょーが」

「いい。平気」

「なーに拗ねてんの?」

ニカと黒崎くんは、やっぱすごい人だねとか、あっちのほうがよく見えるんじゃない?とか言い合っている。

かっちゃんが、くちびるに赤いのついてるって、こころちゃんの口を指で拭った。
こころちゃんが恥ずかしそうにしていて、その顔も可愛い。

気づいたニカがウェットティッシュをこころちゃんにあげた。
さすが、どこに居てもニカはしっかり者だ。

「別に拗ねてなんかないから」

「ゆめのほうが可愛いよ?」

「はい?」

「浴衣」

「あー…ありがと」

「ほんっとゆめは全然俺になびかないねぇ。他の子達なら俺に可愛いなんて言われたら死んじゃうかもしんないのに」

「それ自分で言うー!?」

「あっはは!ジョーダンです」

だいぶ陽が暮れてきている。
港に着いたときよりも人が集まってきていて、
私達も固まっていないと他のグループの人達に紛れてしまいそうだった。
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