先輩のこと、好きになってもいいですか?
今日、わたしはあるとんでもない行動に出てしまう。
「……っ、和泉先輩のこと、好きになってもいいですか?」
この胸の高鳴りに名前をつけるなら、それは一体どんなものだろう。
先輩を見ているだけで、素っ気なくても決して冷たくはない返事をされるだけで、どうしてこんなにも頬が熱くなるんだろう。
ぜんぶぜんぶ初めてのことで、何ひとつ分からない。
だから、わたしはこの感情の正体を明らかにするために、告白まがいな告白をした。
我ながらおかしいと分かっているけれど、口が思考に従わなかった。
こんな言い訳しても、すぐに納得してくれる君じゃないって分かっていたのにね。
いつも無表情で、何を考えているか分からない先輩の顔が変わる瞬間を見た。
目をまん丸くさせて、心底驚いたという表情。
こんなあどけない表情の先輩を見るのは初めてで、さらに加速する心臓。
───“好きになるだけなら、いいよ”
感情の読めない表情を浮かべたあの日の先輩を、わたしは一生忘れることはないんだろう。