先輩のこと、好きになってもいいですか?
中学時代の友達は、勢いのあるところがわたしの良いところだと褒めてくれた。
わたしに向かって伸ばされていた先輩の手を取って、握手をする形でぎゅっと握る。
少し冷たくて、だけど形の綺麗なごつごつとした男の人の手。
指は細いのに、やっぱり男の子なんだなあって、その時初めて実感した。
桜の花びらが舞う朝の中庭の奥。
誰にも見つからないこの場所には、今わたしと先輩しかいない。
初恋の色は、一体何色なんだろう?
今まで恋をしたことがなかったわたしは、ずっとそんな馬鹿らしい疑問を抱えていた。
今、ようやくその疑問に対する答えが出た気がするよ。
──先輩がわたしに、お試しで付き合ってみないかと告白まがいな告白をしてくれた場所には桜の花びらがごまんと溢れていたから、きっと初恋の色は桜色だね。
そんな、あほらしいけれど幸せな答えを得た、1日の始まりの朝。
きっと、わたしはこの日を永遠に忘れることなんてないのだろう。