先輩のこと、好きになってもいいですか?
*
「ああ~やばい、どうしよ……」
わたしは1人、高1の下駄箱の前でうなっていた。
すると、ある人の気配がした。
「あらら、これはまた派手に濡れちゃったね」
残念残念、と言いながらわたしの隣に並んだ白月先輩。
「先輩……! 実はそうなんですよ……こうならないようにと極力水たまりを避けてきたはずが、どうしてかこんな結果になっちゃって」
わたしの話を聞いた先輩は、眉を八の字の形に下げる。
「靴下の替えはある?」
「はい、それは一応」
「そっか。それなら安心だね」
先輩はそう穏やかに笑った。
その笑顔を見るだけで、自然とこちらまで笑顔になる。
先輩は人を笑顔にする特別な能力でも持っているのだろうか。
先輩が見守る中、靴下を履き替えたわたしの耳に、ある物音が聞こえた。
──ガタン。
それは、傘が床に落ちる音だった。
音がした方向を振り向くと、そこには。