先輩のこと、好きになってもいいですか?


ああ、なんでなんだ。

イライラのせいで歯ぎしりが止まらない。


なんで美辺の側にいるのはおれじゃないんだ。

こんな感情は初めてで、驚きと戸惑いばかりがおれの心を支配する。


「ゆうちゃん、大丈夫……? 俺のことは気にしなくていいから……、ゆうちゃんが代わりに泣く必要はないんだよ」


あの朝、ゆうの隣りにいた男が吐き気がするほど優しい声で話しかける。

肩に置いたその手を離せ。


お前は美辺に触れていい代物じゃない。

胸に湧き上がる熱い塊。


これを何と言うのかは、まだ知らない。

いや、本当はもうすでに知っていた。


これは嫉妬だ。

醜い醜い、ただの嫉妬。


「……っ、くそ」


何もできないでいる自分に無性に腹が立つ。

< 59 / 69 >

この作品をシェア

pagetop