双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
決して人の心に土足で踏み込んだりはしない気遣いと、優しさと控えめな性格に、いつしか居心地の良さを感じていた。手放せなっていたんだ。

 茉莉はどうだったんだろう。笑ってはいたが、心の中は……。

 俺は茉莉を知らない。

 あれは彼女と会い始めてひと月ほど経った頃か。

 大学で同期だった友人が、茉莉がいた航空会社でパイロットをしている。たまたま空港で会ったときに茉莉を知っているか聞いてみた。

『あー、あの子ね。エリートパイロット狙いのCAで、確か既婚者のキャプテンとの不倫がバレて退職したんだよな』

『え?』

 耳を疑った。

 俺の知る茉莉とはあまりにもイメージがかけ離れている。

『マリで間違ってないか? 航空中耳炎で辞めたようなことを聞いたが』

『そうだよ。ツルノマリ。そういえば表向きの退職理由は中耳炎の悪化だったっけ』

 彼はこうも言った。

『ぱっと見は派手さなんかないんだよな。真面目そうでさ。女は化けるから怖い』

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