双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 もし連絡があるとすればこれからかもしれないが、以前彼とやり取りしていたSNSはアカウントごと消してしまったままだ。彼が私に連絡をしようにも手段はなく、誘ってくるはずがない。

 わかっているのに、私ったらどうしちゃったんだろう。

 せっかくの紗空が調べてくれると言ったのに、それを断っておきながら、胸の中がウズウズして仕方がない。

 ため息をつき、緑色の蒸しパンを思い切りかぶりつく。

 小麦粉とベーキングパウダーに黒糖でほんの少し甘くしただけの素朴な味わいに、いくらか慰められるような気がする。

 連絡なんてなくていいんだ。私と彼は違う道を進む人同士なんだもの。

「牛乳も飲むんだよ」

 蓋つきのカップから飛び出しているストローをふたりはチュウチュウと吸う。ガーゼで口もとを拭いたり世話が焼けるが、それが今の私の幸せだ。

 ほかになにもいらないとしみじみするうち、心の波が落ち着いてくる。

「ごちそーしゃまー」

「はーい」

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