双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 彼は、こどもを受け入れないという意思表示にほかならない。

 想像するだけで、ズンと心が重たくなる。

 彼に頼るつもりはないが、知っていて無視されるのはつらい。

妊娠を打ち明けられなかった理由の半分は、産むのを反対されたら悲しいと思ったからだった。

 私は自信がなかった。

 だって私たちはただエーゲ海で出会っただけで、将来の約束なんてしていない。

 ましてや彼はパイロットというだけではなく、神城技研工業の御曹司。やはり、なにもかも無理だったのだ。

「素敵な人でしたね」

 ハッとして顔を上げると晴美さんが目の前にいた。

紙袋の補充にきたようで、棚の中からいくつか袋を取った。

「あ、今店に入ったお客さまは?」

「なにも買わずに行ってしまいました」

「そうでしたか」

 気を取り直して、スタッフルームから店内へ出る晴美さんの後に続く。

 晴美さんは航輝さんが何者なのか気になっているはずだ。晴美さんの中で妄想が膨らむ前に、自分の口から伝えた方がいい。

「さっきの人は、友だちの旦那さんの友だちなんです」

「そうなんですね。すごいイケメンでしたね。モデルさんかと思いましたよ」

 おかげで十歳若返ったとか言いながら、晴美さんは新たに入ってきたお客さまの接客に向かう。

「いらっしゃいませ」と声をかけ、私はカフェコーナーに行った。

 彼が使ったカップを片づけながら、また考えてしまう。

 明日、彼が来なければそれでいい。

 とにかく、来たときどうするか考えなきゃ。


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