双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 交際期間はほんの数カ月。それでも両手で余るくらい愛し合って、強く深く記憶に刻まれている。

 でももう、遠い過去だ。

 彼に知らせず産んだ双子はもう歩いているし、彼だって結婚して、もしかしたら父親になっているのかもしれない。

 それくらい三年という月日は長い。

「ばいばーい」

 秋だというのに元気なツクツクボウシに負けじとばかり大きな声で、子どもたちは老婦人にさよならをする。

 それを合図にベンチから立ち上がった。

「さあ、お家へ帰ろうか」

「うん」

 子どもたちの帽子を直して手を繋ぐ。

 両手から伝わる温もりに心がほっこりとする。

 この手を守るために、私は毎日を必死に生きてきた。

 熱を出して泣く翔真を抱き大空を背負って病院に駆けつけた夜や、寝不足で自分が倒れた日もあった。いつが夜でいつが朝かわからないような日々を駆け抜けたけれど、いくら苦労や努力を並べたところで、それは私の勝手な言い分なんだろう。

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